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キーポイント

  •  AIHEプロジェクトには、要諦とも言えるポイントが5つあります。各ポイントについて、順を追って以下、説明します。
  •   1.施設園芸
  •   2.規模の経済
  •   3.Japan Tech.(日本発の技術)
  •   4.マイクロリースと野菜による返済
  •   5.マイクロビジネスの創出への貢献
  • 1.施設園芸
  • 施設園芸(水耕栽培)の写真(タイ)
  • タイ国ロイヤルプロジェクト、Mae Jo大学水耕栽培をの様子
  •  AIHEプロジェクトでは、慣行の土耕栽培ではなく、施設内養液栽培を前提とする。
  •  理由は、養液栽培により投入資源を最小に留め、植物に好適な環境を築くことで栽培期間短縮と品質安定化を図る為である。慣行の土耕栽培では自然環境下で栽培する為、適切な肥料・農薬の使用量がよくわからず、どうしても多めに使用してしまい、結果として土壌生体系(微生物層)を破壊、効き目が弱くなることで投入量を増やさざるをえないという悪循環に陥っている。この悪循環を断つべく、養液栽培では液肥濃度を細かく管理することで植物が必要とする最低量の肥料に留め、投入資源量を最小化すると共に、養液の循環使用によって各種投入物の自然界への放出を最小限に留める(土耕栽培では一般に投入肥料の半分以上が植物体には吸収されず、土壌菌・微生物を殺し地力低下を引き起こしつつ地下水汚染に至る、と言われている)。
  •  加えて、施設栽培を採用することは病虫害リスクそのものを減らすことにもなる。病気の大概は土壌経由なので、水耕栽培を前提に置くことで土壌経由の病気を減らし、外部からの害虫の飛来を減らすことで虫害リスクを減らす。病虫害リスクが減り、環境制御が可能となることで天候リスクが大幅に減少する為、収量が安定し農業固有のリスクを低減、所得安定に寄与する。
  •  AIHEプロジェクトにて対象とする貧困農家は、採算化困難な規模の土地しか有していない(もしくは土地を有さない)が故に貧困である。従って、農業所得向上には単位面積当たりの土地の生産性、並びに換金性を高めねばならない。施設栽培は、土耕栽培に比べ栽培回転率(収穫回数)が数倍高い。また換金性を高めるべく高単価作物を得る為に本来当地に無い温帯作物の栽培を目指すことからも、環境条件のコントロールが必要となる。
  •  施設栽培の初期導入コストの問題は後述するとして(『4.マイクロリース』の項 )、ここではランニングコストの問題について触れたい。
  •  本プロジェクトでは温帯作物を対象とする限り、山間部とはいえ、亜熱帯の地域で栽培するには冷房対応が必要となる。これに対し、ハウス全体の気温を下げるのではなく、例えばイチゴで言えば成長点があるクラウン部分のみを養液を流したホースを接することで局所冷却、植物に環境条件を意図して” 誤認 ”させ、ハウス内気温が高くとも花芽分化を促し結実を可能にする。これにより省エネルギー化を実現。これは一例であるが、かように国内には施設園芸や植物生理に関する農業ノウハウの集積がある。こうした知恵の一つ一つを統合されたパッケージとして施設栽培と共に現地展開し、低ランニングコスト・省エネルギー対応の実現を目指す。
  • 2.規模の経済
  • 規模の経済追求
  •  施設園芸による収量の安定化と青果物の品質向上・均一化は法人需要家に対する契約栽培の前提となるが、これだけでは農業所得の向上は十分とは言えない。本プロジェクトでは各地域にプロジェクト直下の施設園芸実践組織として設けるRASC(Regional Agriculture Support Center)を通じて複数の農家を束ね、設備投資を伴う資本集約的な業務を担うことで、これまで個々の農家では資金・投資負担に耐えられず生産性改善が進まなかった業務領域において規模の経済を働かせ全体の生産性向上を狙う。
  •  また、技能や知識面で高度な専門性が必要な領域においても、RASC間、また日本と現地の農業大学や研究機関との連携を実現することで、知識集積の観点でも規模の経済が働く形にする。
  • AIHE/RASCが担う業務
  •  例えば、 農業では一般に「苗七分作」と言い、丈夫な苗さえ作れれば後の栽培が楽になることを表す表現だが、上部な苗を作るには高度な技能ならびに育苗施設含めた一定の資本投下が必要である。例えばこれに対しRASCにおいて育苗することで、各農家は栽培負担を軽減すると共に、収量増を期待できる。
  •  その他にも上述の業務をRASCが担うことで、個別農家が自前対応した場合には売上の4割相当になるコストを2割程度まで押さえられる可能性があると試算している。
  • 3.Japan Tech.(日本発の技術)
  •  AIHEプロジェクトでは、日本国内に無数にある光るニッチ技術を活用することでブレークスルーを狙う。シビアな環境での使用だからこそ、光る技術がたくさんある。解決すべき問題が明確で、ニーズがシンプルだからこそ、如何に問題を解決しきれるか技術の真の価値が問われる局面が多くある。
  •  AIHEプロジェクトは特定の商材やサービスの売り込みを目指した活動ではないからこそ、日本のニッチ技術をひとつのパッケージにまとめあげ、現地での意義ある利用方法を考えることを追求していく。
  • 国内技術の活用: 機能性フィルム活用
  • 注)上記の機能性フィルムはベルグリーンワイズ株式会社が提供
      http://bellegreenwise.co.jp/aura_pack/
  •  農業所得が抑えられる一因として、コールドチェーンが確立されていないが為に流通上のロスが大きく、これを農家側が補償する形となっていることが挙げられる。従来の発想であれば、物流インフラを整えて…となるが、本プロジェクトではそうした発想はとらず、フィルム技術による改善を図る。
  •  日本には、高鮮度保持フィルムという特殊なフィルムがあり、フィルム自体に特殊な物性を持たせることで亜熱帯地域の高温下でも青果物の鮮度を1週間程度、劣化させずに保つことができる。ちなみに日本でも最近実現した技術である。従来のフィルムによる鮮度保持のアプローチは、袋にミクロの孔をあけて、青果物の蒸散と呼吸量に応じて袋内の湿度を好適にすることで鮮度劣化を緩和するというアプローチであった。これは、日本のようなロジスティクスが整備され、輸送時環境が一定ならば、当初想定した呼吸・蒸散量から大きく乖離することがなく鮮度保持が可能となるが、東南アジアにおいては通用しない。これに対し、本プロジェクトで採用を考えるフィルムは異なるアプローチを採る。フィルム自体に機能性を付与している為、品目や輸送環境の違いに関わらず効果を発揮することが可能。国内のロジスティクスが整備された環境よりも、環境がシビアな亜熱帯気候×輸送インフラ未成熟地域だからこそ光る、活かされる技術である。
  • 4.マイクロリースと野菜による返済(実現に向けた検証段階)
  •  施設園芸を開始する上で一番問題となるのは初期導入コスト。低コスト型の施設であっても200~300万円(10a=1,000㎡規模)の投資負担が生じる。施設栽培により本費用は3年程度で回収可能ではあるものの、(現状の)年間収入が20万円を超えないような農村地域において、本負担額を即座に一括で負担することは不可能である。
  •  但し、そうした地域においても百万円を超える農機具を分割払いで購入しており、年間負担が十数万円までであれば心理的抵抗感が少ないことを事前ヒアリングで確認している。
  •  一方で、冒頭の問題意識にて言及したとおり、日々の費用負担=現金需要が農家の資金繰りを悪化させ、事業リスクを高めている。当初対象とするタイ北部/東北部においても、日々の現金需要を手当てする為に不利な条件でも収穫物を売却せざるを得ない状況が頻繁に生じているとのこと、また、大規模な土地を有する富裕農家か親族に公務員を持つ農家以外は銀行借り入れが困難であり、資金融通手段が無いことも確認している。従って、本プロジェクトで想定する施設園芸導入の施設費用を分割払いであれ、農家側の現金負担を増やすことは当初の問題意識に背くことになる。
  •  そこで、AIHEプロジェクトでは、収穫後の野菜による返済を考えている。これは毎日収穫可能で、収穫量が安定的な施設栽培だからこそ可能なスキームである。
  •  以下、構想しているマイクロリースについて、図を参照しつつ、融資フローと資金回収フローについて詳細に説明したい。
  • マイクロリースと野菜による返済を利用した資金フロー
  • 上記金額はあくまで例示であり、現時点で投下している額ではありません。現時点では、栽培実証を通じてマイクロリースの枠組みが機能するかを検証する段階にあり、資金の募集一切を行っておりません
  • 融資フローについて
  •  日本側からAIHEプロジェクトに対し融資を行い、AIHEプロジェクトが直接運営するRASCに資金を分配。RASCにて施設園芸に必要な機器を購入し、これを末端の農家に小額でマイクロリースする
  •  多くの農村開発に向けた資金援助において、投下資金は既得権益化した現地の一部の農家に分配され末端農家まで行き渡らないか、もしくは末端農家まで行き渡らせようと思うと管理・運営コストが高くなり過ぎ、現実的ではなくなる。これに対し、日本側からの融資においてAIHEプロジェクトが融資相手となり回収含めた一切の責任を負い、資金出し手側で発生する運営・管理費用の軽減を図る
  •  末端農家への分配を資金ではなく栽培施設とすることで、RASCと参画農家間で施設栽培の技術指導を通じた実務上のつながりを担保できる。加えて、現金の分配ではなく機器リースとすることで資金使途を明確化、資金の所在も明らかとなる
  •  以上を年間負担額が十数万円程度のマイクロリースとすることで、対象地域の貧困農家においても抵抗感なく受け入れられるようにする
  • 回収フローについて
  •  末端農家からの回収は先に述べたように収穫後に野菜によって返済を受ける。これにより現金負担を無くし、農家としても返済額が野菜の生産原価で済むことで返済額が実質軽減されたことになる。日々収穫可能な施設栽培ならではの返済スキームである。また、収穫後の返済である為、各RASCとしても確実に収穫につながるよう施設栽培指導を行わなくてはならず、RASCと契約農家の利害が一致する
  •  各RASCが末端農家から資金回収後、AIHEプロジェクト事務局に現金返済する訳だが、各RASCでは回収した収穫物をそのまま換金化するのではなく、食品加工し付加価値をつけて販売、換金化することを企図。これにより、食品加工の利潤の分だけ多く資金回収したこととなる。日本側には当初定められた金利と返済元本のみを返済し、食品加工を通じて得た余剰回収分は、自らの運営原資として活用する
  •  最終的にAIHEプロジェクトから日本側に現金で返済するが、金利は5%程度を想定。日本側にとって魅力的な金利水準とする一方、現地農民にとっては通常借入金利が10%を超えることから5%は好適な金利水準となる為、現地の抵抗感を低減できる
  • 5.マイクロビジネスの創出への貢献
  • コミュニティビジネスの創出
  •  施設栽培と安定買取による貧困農家の所得向上、RASC(育苗、栽培、食品加工)における雇用創出に加え、AIHEプロジェクトを通じてコミュニティ内におけるマイクロビジネスの創出を支援する。
  •  イチゴには一定の割合で商品果にならない奇形果が生じる。味や安全性など問題はないが換金性の低い奇形果を地域コミュニティに提供することで、ジュースにして販売するといったようなコミュニティ内でのマイクロビジネス創出支援となる。イチゴはあくまで一例であるが、他作物においても同様の展開が可能。また、プロジェクト本体のキャッシュフローに余力が出てきた後は、こうしたマイクロビジネスに必要な機材(ジューススタンドやアイスバーなど)のマイクロリースも行うことを目指したい。